8年前に夫を胸腺がんで亡くしました。今は、患者・家族支援活動をしております。先日、三人の方から仕事に関する悩みを聞きました。
A氏(肉腫 50代 男性)
<大手企業で働いていたが、上司にがんを打ち明けたとき、柔らかい言葉ながら直接的な強い退職勧告を受けた。職場で自分が全否定されたようで居場所がないように感じた。実際に稼働日数が少ない月もあり、職場に迷惑をかけているという意識にさいなまれた。この先どうなるのか見えず絶えず不安を抱えていた。収入、治療等で生活が一変し、家庭も崩壊寸前までいった。自己都合退職要求に対し、何とか会社都合退職に変更させた。今も経済的に厳しい状況が続いている。>
Bさん(脳腫瘍 50代 女性)
<Bさんががんになったとき、夫が彼女に相談しないで、看護のため退職してしまった。彼も悩んだはずだ。退職したことが本当によかったのだろうか?常に申し訳ない気持ちになる。>
Cさん(大腸がん 40代 男性)
<大腸がんの治療を続けながら非常勤で私立高校の教師を務めていた。抗がん剤の点滴をしながら教壇に立ったこともあった。この1年間でがん患者でもしっかり働けるという証明ができたと思っていたが、4月から失職することになってしまった。非正規は簡単に失職する。失職をがんのせいにはしたくない。「働くことが治療」だということを訴えたい。>
患者自身や家族が失職したり、自ら職を辞したりして苦労をしています。治すための治療のみならず、社会復帰のための治療も医療者に求められる時代となっています。また、事業主は従業員の誰もががんになりうることを理解し、がん患者の特性を理解し、患者従業員の相談に応じて、患者従業員がやれる仕事を工夫するなどの協力体制をとることが必要です。企業は患者従業員が収入を確保できる仕組みを作り、そういう企業を都道府県は公表したらいいのではないでしょうか。「がんになっても安心できる社会」が国の基本計画の目標にもなっています。理解のある企業にはインセンティブを、理解のない企業には行政指導で理解を求めていってほしいと思います。