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パラメディカ Pick Up! 闘病記 〜すい臓がん

パラメディカ
故星野史雄さんの闘病記古書店「パラメディカ」に 遺された7000冊の闘病記…
ホシノDB
故星野史雄さんの闘病記リストを整理し
順次公開しています

わたしのがんnet スタッフが、すい臓がん闘病記をご紹介します。

 モルヒネはシャーベットで 〜家で看取った死〜

モルヒネはシャーベットで
波多江伸子著
 鎌倉書房 
1992.5.1
  • すい臓がん
  • 母、家族
  • 在宅死
  • ホスピス
  • サナトロジー
  • シシリー・ソンダース
  • E・K・Ross

著者は、看護学校などで教鞭をとる一方、すい臓がんの母を看取った倫理学者。

短評

文中、モルヒネカクテルという疼痛治療の薬を開発した、シシリー・ソンダースという医師の名前が出てくる。彼女は、緩和ケア、ホスピスケアの最初の提唱者でもある。それまで、終末期を迎えた患者は窓のない暗い部屋で人知れず死期を待つという辛く人間性を欠く扱いを受けていたという。彼女は、せめて窓の一つもあればという運動を始めたという。人としての尊厳を一つの形にした出来事であった。

母の余命が三ヶ月と言われた著者も、病院での死ではなく自宅での最期を選択し、様々な条件を整えるその記録でもあり、その時々のあるべき医療、看護、社会の有り様を問う著作となっている。

メディカル・パターナリズムと銘打った章では、当時の医療者とりわけ医師と患者の関係を厳しく見据え、患者の尊厳を獲得する視線を貫く倫理学者の姿勢が爽やかであり、その後の時代に先駆ける著作となっている。

とはいえ、母であり父を交えての家族の一員として、母への優しい眼差しにあふれ、ユーモアを交えての文章は読むものを飽きさせない。

母を看取った直後、「家の前の道を、懐かしい、空とぼけたラッパの音を響かせながら、自転車に乗った豆腐屋が通っていった。やがて、ドクターと看護師が到着した。」と看取った家族の穏やかで納得感に溢れる一文で結ばれている。

2021年1月30日 読了 スタッフY


がんと上手につきあいなはれ 

がんと上手につきあいなはれ
黒田清 著
徳間書店
2000.10.31
  • すい臓がん
  • 新聞記者 
  • ジャーナリスト

帯に、『2000年夏、一人のジャーナリストが膵臓ガンで逝った。―――69歳。本書は「闘病の記録」ではない。体内に巣食うガン細胞にユーモラスに語りかけ、なだめ、時に罵りながら「上手につきあい」続けた感動のドキュメントである。』とある。

短評

言わずと知れた、ジャーナリストの中のジャーナリストともいうべき黒田清氏。

その徹底した取材の姿勢そのままで、ガン=ガン子ちゃんに向き合い、語り合う著者の取材記とも言えるかも知れない。地べたにあぐらをかくようにしてガンに向き合う姿を想像してしまう。

入院中の医師との駆け引きなど、取材先の口の重たい相手の挙動を読み解く記者魂を彷彿とさせ思わず微笑んでしまう。各章立てのタイトルもユーモアに溢れ、もともと「この人はすべてのことを大胆にユーモアに包み込んで受け入れて来た人なんだなあ」と思わせ状況の厳しさとは裏腹に納得させられてしまう。もちろん、肝心の治療の数値も新たな治療法も網羅していて情報が埋れてしまうことはない。また、仕事をNK(ナチュラルキラー)細胞と呼び、ガンに打ち勝つのは何にも増して仕事であるという猛者ぶりも嬉しい。そんな時代が当時は当たり前だったのだろう。

実は、闘病記を書く人には、文筆家、記者などが多い。

自身の記録を中心に書き進める闘病記にしても、一冊の本にするほどの文章を書ききるのは簡単ではない。どうしても、書くのを生業とする人の本が多くなるのは当然だ、がそうであれば、その内容は単なる記録というよりも小説であったり論文であったり、まるで映画の台本であったりするわけで、その意味でも闘病記が奥行きのある大河ドラマとして読み応えのあるものとなるのは必然であるのかも知れない。

2021年8月5日 読了 スタッフY


最後の授業 ーぼくの命があるうちにー

ランディ パウシュ著
+ ジェフリー ザスロー
訳 矢羽野薫
ランダムハウス講談社 
2008.6
  • すい臓がん
  • 46歳

著者であるランディ パウシュは、バーチャルリアリティの第一人者とされコンピュータサイエンス界では世界的権威とされる人物。

短評

2006年、大学教授のパウシュはCT検査の結果、すい臓がんと診断される。本書の元となる講義を引き受けた直後、がんの転移が判明。

余命半年足らずと宣告を受け、講義より家族との時間を大切したいと願う妻に、そして幼い子ども達へメッセージを残すことを目的とし、2007年9月、カーネギーメロン大学の講堂で「最後の講義」を行う。

身体の問題や治療など、医療のことは具体的に書かれていない。夢を叶えるための壁を「真剣に望んでいるか証明するためのチャンス」と捉え、子どもの頃の夢をいくつも現実のものに変えていく。

どうやって叶えてきたのか、そこに導いてくれた人たち。
教育者として夢を叶えようとしている学生へ。
人生を穏やかに過ごすために必要な準備をすることの大切さ。
家族への愛。

避けられない現実をしっかりと見つめ、死を目の前にしてどう生きるか、生きることへの尽きない情熱が伝わる一冊。

2021年8月2日 読了 スタッフH


お母さんが癌になっちゃった 

藤原すず 著
メディアファクトリー 
2008.6
  • すい臓がん

著者のすずさん(24歳)はフラワーデザイナーを目指して東京の花屋でアルバイト中に父の電話で母ががんになったことを知る。

短評

実家に帰ると母は思っていたより元気。

しかし普段しないことをしている父の姿に不安が増していく。

仕事を辞め、最初は母の小さな願い事を叶える事が幸せだと思っていたが、時々ふと「いつまで続くのか」「ちょっと面倒だな」という時間の経過とともに変わっていく気持ちは家族なら1度ならずあるもの。

「私がこんなに悩んでいるのに兄はテレビを見て笑っている」と著者は思う。一方兄からしたら「買った服を母に見せて喜んでいる妹は母さんが死ぬのは怖くないのか」と気持ちのズレを感じるが、気持ちの波はそれぞれ違うことを認めながら母を見守っていく。

余命1ヶ月と告げられた時、母に伝えるべきか父、兄と相談する場面など大切な人を思うからこそ正解のない考えや葛藤など、家族の闘病記録がシンプルなマンガでありながら実話の重みを感じる。

2021年8月2日 読了 スタッフH

故星野史雄さんの闘病記古書店「パラメディカ」に 遺された7000冊の闘病記は、星野さんの思いを受け継ぎ、私設闘病記図書館パラメディカが伊豆高原に開館しました。原則、毎月第1、第3の金曜、土曜が開館日です。

HOSHINO DBはパラメディカ蔵書のデータベースです。48冊のすい臓がん闘病記をHOSHINO DBに掲載しました。