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がん一万人の声40代 女性(家族), 腎臓がん

ある土曜日の朝、駅のホームで電車を待っている時に、実家の母から携帯電話の着信があった。そこで父が癌だと聞かされた。
腎臓癌だと聞かされたのは前日で、父と母の二人で話を聞き、昨夜はふたりして泣き明かしたと言っていた。
とりあえず用事を済ませ、すぐ看護師の友人に電話をした。今後のことを相談するためだ。ちょうどホスピス開設のニュースを見た頃だったので、ホスピスの事も聞いてみたが、費用の面、ベッドの数の面で入れないだろうと言われた。その時に自宅介護という方法も教えてもらった。
今では在宅介護も当たり前になっているが、当時はまだ珍しかったようで、往診してくれる先生を探す所から始まった。病院のホームページを調べたり、ホームページが無いところは電話をして聞いたり、見つかったと思えば癌患者ダメだと断られたりと大変だった。
他にも市役所に行き、どういうサービスが受けられるか聞いて、ケアマネを探したり、訪問介護ステーションに依頼に行ったり、介護ベッドを借りられる所を探したり、とにかく老人介護の為のものはたくさんあったが、がん患者のための仕組みが点々とあるだけで線で結ばなくてはいけなかった。
車椅子でも生活できるよう家の中をリフォームし、長女の私は母と介護するために実家へ戻り、派遣で勤めていた会社も辞めた。
父が退院する時は独りで歩くことが出来ない状態だったが、家に連れて帰ってきたら、独りで歩けるようにもなったし、食事もちゃんと食べられるようになった。
それから約2ヶ月父と一緒に生活できた。最期を看取ったのも自宅。あとで聞いた話だが、父が退院するときあと2週間もたないと医師間で引き継ぎがあったようで、それが約2ヶ月持ったから先生も感心していた。
父が亡くなってからしばらくは、まだいっぱいやれることがあったのではないか。他にいい方法があったのではないかと後悔していたが、「当時でのやれることは精一杯やった。」「どんなにやっても人間後悔するよ。」と言われて、やっと心の整理が出来た感じだ。
当時まだ自宅介護は介護保険も使えず、かなり出費があったが、自宅で介護できて本当によかったと思う。