がん語らいの交差点 わたしのがんカフェ

星野史雄のパラメディカWeb書店

さよならタマちゃん

  • 著者
  • :武田一義
  • 出版社
  • :講談社(イブニングKC)
  • 発行年
  • :2013年

本の詳細はこちら

星野店主の書評

漫画家アシスタントの著者は35歳で精巣腫瘍と診断される。イブニングKCの一冊。

星野店主の書評

 今回ご紹介する本は、漫画家の武田一義さんがアシスタント時代に体験したガンの闘病を描いた漫画である。

 武田さんが35歳の時に精巣 (=睾丸)腫瘍がみつかった。突然のガン告知に「何で俺が?」といきなり「死」を連想する病気に直面したときの思い、また入院中の人間模様や抗ガン剤の副作用、治療うつなど、がん患者が経験する一連の流れが実にリアルに描かれている。また、随所に奥様の支えが垣間見え、心が温まる。入院中、同じ病気のIさんが武田さんに言った言葉が胸にズンとくる。

「武田さんみたいに気づいてすぐ病院に来てたら……俺も今頃良くなってたかも。忙しかったのはホントだけど、命より大切な用事なんて一つでもあったのかな。今すぐ病院に行け!あの時の自分に言いたいよ。」

 がん研有明病院の資料によると、精巣腫瘍は10万人におよそ1人が罹る稀なガンで、15~35歳の若年層の男性では最も多い悪性腫瘍だ。進行が早く転移もし易いため、早期発見がとても重要らしい。近年は治療法も進歩し5年生存率は90%と高く、武田さんも手術から既に5年を経過。現在も元気にご活躍されている。  

 まだ自分はガンなんて無縁だと思いがちな若い人が、ガンについて知るには手に取りやすい本だと思う。そのうち、自分の息子にも薦めてみよう。