新聞記者で共働き、ノーキッズという著者は、34歳で乳がん(粘液がん、Ⅱ期)と診断され、同じ年に三度の手術を受け、更に卵巣がんの疑いを指摘される。子宮や卵巣を失う可能性を告げられた時、患者は妻として何を考え、夫は伴侶としてどう励ましたのか。アマチュアの物書きでは、どうしてもこのあたりで筆が鈍るが、著者は「声をあげて泣き、自殺も頭をかすめた」ことを吐露する。胸のしこりを発見した時には慌てて産婦人科に駆け込み(外科か乳腺外科が正しい)、治療に選択肢があることに戸惑った著者も、やがて自身の価値観が問われていることに気づく。