がん語らいの交差点 わたしのがんカフェ

星野史雄のパラメディカWeb書店

親ががんだとわかったら
家族目線のがん治療体験記

  • 著者
  • :はにわ きみこ
  • 出版社
  • :文藝春秋
  • 発行年
  • :2010年

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星野店主の書評

著者は1966年生まれのフリーライター。2009年に母からの電話で72歳の父親が食道がんと知る。母の乳がん、自分の子宮内膜症手術などの経験から医療現場には詳しい著者だが、父のがん発覚から手術・退院まで、やるべきことは次々に押し寄せて来る。そこで、母親や妹と対処のためのプランを立て、役割分担を決める。自分たちの仕事はどうするか、父の病気を誰に伝えるか、面会の送迎は誰がするか、治療後のマネープランはどうするかなど。“チーム家族”のための介護マニュアル。

山田店員からメッセージ

 皆さんこんにちは。店員の山田です。

 前回までマンガの闘病記を紹介してきましたが、今回から文章の闘病記に戻り、がん患者を支えた家族の闘病記を集めて何冊か紹介していきます。

 今回取り上げるのは、ライターのはにわきみこさんが書いた「親ががんとわかったら」。がんになったのは、はにわさんの父親で、食道がんです。

 本書は、これまでに紹介した闘病記のどれとも違います。闘病記というより、家族のだれかががんになった人のためのマニュアル本といったほうがいいでしょう。見開きページごとにテーマを絞り、簡潔、明快に解説するスタイルはまるで雑誌のよう。そう、本書は書籍の形をしていますが、中身は雑誌の発想で編集されています。

 このようにいうと、本書がなにか軽薄なイメージに感じられるかもしれません。しかし、そうではない、というか、これは重いとか軽いの問題ではありません。著者のはにわさんは、がん患者の家族にとって役に立つ本を作るために全力を尽くしているのであり、そのために最善と思われるスタイルを採用しました。それがたまたま軽いイメージだったとしても、躊躇する必要はない。と、そういうことだと思います。すみません、山田の勝手な推測です。

 いずれにしても著者のはにわさんはさすがプロのライターで、その文章はわかりやすく、かつ、実践的です。おそらく、はにわさんが当事者でなかったとしても、取材してこの本を書けるすごい実力のある人だと思います。それが実際には当事者であり、自分の経験に基づいて書いているのですから、本当に良い本です。

 がんになった人は、後でその体験を、なんとか人の役に立てたい、マイナスだった自分の経験を、どうにかしてプラスに転じたいと考えるものです。じつは、ライターとは、そういう、マイナス体験をプラスに変えたい思いが非常に強い種類の人間です。転んでもただでは起きない。転んだら転んだことを人に伝えて、他の人が転ぶのを防ぐことはできないまでも、自分よりましな転び方にしてほしい。本書は、そんなライター根性で書かれた本のように思います。