がん語らいの交差点 わたしのがんカフェ

星野史雄のパラメディカWeb書店

大学教授がガンになってわかったこと

  • 著者
  • :山口仲美
  • 出版社
  • :幻冬舎

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星野店主の書評

著者は1943年生まれ。『犬は「ぴよ」と鳴いていた』など擬音語・擬態語などの著作で知られる国語学者、元・明治大学教授。2009年の夏、S字結腸がんが見つかり腹腔鏡下手術を受け、2013年には膵臓がんで開腹手術、その後抗がん剤TS-1による治療が続いた。ご本人が“愚かな ガン患者体験”と言うように、“突っ込みどころの多い闘病記”だが、膵臓がんは発見時に手遅れで、手術も出来ずに亡くなられる方が多い。サバイバー自らの記録として、これは貴重だ。更に膵臓手術の前に、K大学医学部放射線科のK先生のセカンドオピニオンを受けておられる。K先生の御託宣は持論通り「放置しなさい」とのことだった。それが、なぜ著者は手術を受けることにしたのかは興味深い。 蛇足だが、この本の題は「ケモ室に、警報音がピヨと鳴る /なぜ私は心配するのをやめて、膵臓がん の手術を受けることにしたか」にしたら…、売れなかったろうなぁ。

山田店員からメッセージ

 皆さんこんにちは。店員の山田です。今回ご紹介するのは、「大学教授がガンになってわかったこと」です。うーん、このタイトル、誰が考えたんでしょうか。著者ではなく出版社の人が、少しでも売れるようにとつけたタイトルかもしれません。でも、こんなタイトルではあまり読む気がしなくなるのは僕だけでしょうか。もし、他の人も同じように感じるとすれば、非常に残念なことです。内容はとてもいいのですから。

 著者の山口さんは、わずか数年のあいだに大腸がんとすい臓がんに罹患します。その時の治療経験をもとに、がん患者がより良い医療を受けるため、より賢い患者になるためにどうするべきかを書き記したのが、本書です。大筋では闘病記として時系列に沿った書き方になっていますが、自らの治療体験はむしろ脇役。著者が言いたいことを説明するための実例といった感じになっています。

 ここに書かれていることは、がんのピアサポータとして活動している僕が、普段からがん患者の方に伝えたいと思っていることばかりです。患者はがんについて勉強するべき。医師と良好なコミュニケーションをするべき。治療の中心は医師ではなく患者である自分であるべき。どれも全くそのとおりであり、しかもそれが教科書的ではなく、分かりやすい日常的な言葉で説明されています。

 ただし、ここに書かれていることはいち患者の意見であり、絶対的な真実ではない、ということは忘れないようにしたいものです。著者の山口さんは著名な国語学者だそうです。本のタイトルに「大学教授」とありますが、医学や医療、ましてがんに関係のある分野の大学教授ではありません。

ですから、内容には反対意見が出そうな部分もあります。医学知識の解説に、やや不十分で、結果として誤解を招きかねない部分もあります。そこは読み手が気をつけなければいけません。医療情報として読むと、内容に不正確な部分があるのはすべての闘病記に共通する注意点なのです。