日本の検査との違いに困惑でも納得の医療で

 〜イギリスで乳がん治療を受けたAさん〜

Aさんと私は、Aさんが乳がんを発症する5年くらい前にイギリスで知り合いました。Aさんは、50代前半のとっても笑顔の素敵な明るい方です。

Aさんが乳がんを疑ってイギリスで初めてファミリードクターに行ったのが2018年の年末。私はAさんの治療が少し落ち着いてから、はじめて、乳がんだったことを知りました。それ以降、特に何もお助けは出来ていませんが、陰ながら応援を続けさせてもらっています。そして、更に治療がひと段落した2020年3月に取材を引き受けていただきました。

Aさんは、リンパ節に4つ以上転移していたステージ3、HER2陽性。抗がん剤投与後、2019年4つのリンパ節除去に全摘再建手術を受けてから、約7ヶ月が経過。術後のセンチネルリンパ節生検も異常なしで、放射線治療は必要なしで、現在は再発防止の分子標的薬の点滴治療が終了したそうです。

乳がん治療に無知な私にとっても丁寧に説明して頂きました。取材の内容をQ&A方式にまとめせもらいました。

ピカデリーのエロス像。本来は大道芸があったり、観光客で埋まっている場所。閑散としていました。
ソーホーの目抜き通り。あまりに静かで驚きました

Q.2018年の12月に日本で一時帰国なさった際にリンパ節にがんがある事がわかったそうですが、日本ではなくイギリスでがん治療を選択した理由は?

A.生活の拠点がイギリスなので、イギリスで治療をする事を選択しました。術後の生活や身の回りのことを考えると生活の近くというのが選択肢になりました。毎年、1度は帰国していますが、このコロナの影響で帰国することが難しくなるとは思わなかったのですが、イギリスでの治療を選択してよかったと思っています。

Q.日本での診断結果(画像と病理検査のスライド)を含め専門病院に渡した際、使える情報がないと言われたそうですが、日本の検査や診断内容に問題があったからですか?

ロイヤルマーズデン

A.ファミリードクターから、専門病院を紹介され、その病院の予約時に、日本の病理判断書を正式な通訳会社を通して英訳したものがないと受け付けないと言われ、クリスマス時期に苦労して会社を探し、230ポンド(約35,000円)も出して訳し提出すると、意味不明だと言われました。

スライドにはがん細胞は写っていたはずです。多分、日本の先生がマンモグラフィーやエコーの画像を焼いてくれたCDは、デンスブレスト(※)なので不鮮明だったのだと思います。日本でやったのと同じ検査は無駄だしお金もかかるので、検査したくないと言うのはわかる(?)のですが、日本でマンモとエコー、生検しかしていなくて原発もわかっていないと言っているのに聞き入れてくれませんでした。

(※) デンスブレスト(高濃度乳腺(デンスブレスト)は乳腺が多い乳房のことで、マンモグラフィで撮影した際に全体的に白い塊のように写し出され、病変の発見が難しくなります。日本人には多いタイプ。
(?) イギリスは医療費が無料なので、本人の希望にかかわらず費用のかさむ検査などは敬遠しがちと言われます。

グリーンパーク


Q.その後はどの様な経緯でイギリスで検査、治療が進んだのですか?

A.専門病院と上記のやり取りをしていた為、専門医との予約が進められませんでした。12月13日にファミリードクターに行って、1月21日にやっと専門病院の受診でした。それから一連の検査を始めました。専門病院で最初に診察してもらうまでのやり取りに、7週間もかかりました。すでにリンパ節に転移した状態で見つかっていたのに先が見えなくて気が気じゃなかったです。日本で病気が見つかってイギリスで治療を開始するのはこんなに大変なんだなと思いました。

(※)イギリスのマクミラン財団が推奨したがん患者への9つのアウトカム。
1 私は早期発見、早期診断を受けることができる
2 私は自分の病気を理解し、自分にとって一番よい治療の選択ができる
3 私はベストな治療とケアを受けて、ベストな人生を送ることができる
4 自分の家族や友人もサポートが受けられる
5 私は人としての尊厳を重視した治療が受けられる
6 自分で出来ることは自分で出来て(能力を奪われない)、出来ないことは助けを受けられる
7 私は人生を楽しめる
8 私は地域の一員として、誰か困っている人を助け、地域に貢献できる
9 私は最高の最期を送ることができる

優先カード、化学療法中と明示されています。

Q.日本とイギリスの治療方法で違いはあると思いますか?

A.いろいろ調べてみましたが、ほぼ同じだと思います。ただ、イギリスで、がん治療をされている日本人にとっては抗がん剤の投薬量はちょっと強い(多い)と言っている方もいるそうです。幸い私の病院は4種類の吐き気止めの薬を処方して頂いて、乗り切る事ができました。

Q.イギリスの病院のほとんどが公立病院(※)なので一括した治療方針があるはずですが、病院によって違いがあると思いますか?

A.はい、そう思います。私は幸いにもイギリスで一番と言われるがん専門のR病院に通える圏内に住んでいるので、R病院で治療を受ける事が可能でした。住む地域によっては、総合病院の専門科で診てもらったりするので、地域差はあると思います。*R病院はイギリスで最先端の研究や治療を行っている病院で、国内の最先端の設備や 優秀な専門医師が勤務されています。公立病院なので、R病院で治療を受けられるのは、R病院の近辺の住人となります。自費での治療なら可能なので、遠方から治療にくる人もいます。(※)イギリスの公立病院比率75%、日本は20%。

奥に写ってるオレンジのバリアは、公園の向き合い型のテーブルベンチ。ロックダウン中のため使用出来なくなっています。

Q. イギリスで治療して良かった事は?

A.入院日数が少ない事です。自宅療養中もホットライン対応がとても親切でよくしてもらいました。抗がん剤で調子を崩しているなど、細かいことについても24時間の対応をしてくれ
ます。

さらに、肺炎を起こして、最寄りの総合病院に駆け付けた時などでも、緊急病棟で優先カードを持っているので、待つことなく診てもらう事ができてとっても良かったです。

そして、最大の長所は、やはり治療費がゼロと言う事です。タダだから信頼できないわけではありません。時間かかりましたが検査も治療も納得してすることが出来ました。

イギリスでは、エコーの際に何度か「lumpy(ランピー、塊だらけ、塊が多い)」との指摘を受けました。術前抗がん剤に入る前にがんのある場所にクリップでマーキングをしたのですが、密度が濃いせいで、技師がなかなか場所を確定できない様でした。エコーをかけながら場所を特定してクリップを挿入するのですが、リンパ節の方はすんなりクリップをかけたものの、胸の方ははっきり見えないので、何度もMRIの画像を確認しがらやってました。

「砂の中を探している様だ」と言ってました。R病院で治療を受ける事ができて、とても良かったです。日本ではセカンドオピニオン、サードオピニオンと右往左往される方がいらっしゃいますが、その必要がありません。最高の先生達、設備が整っています。全信頼を寄せました。

治療後の検診は、本当は1年に1度のマンモだけだと言われていました。先生にデンスブレストなのでマンモだけだと心配だと言い、その時はチームで見るから大丈夫だと言われました。

全ての患者に対し、チーム体制で当たるのがこの病院の良い所の一つです。結局、1年後検診の時にはエコーも加わっていました。やっぱり、lumpyねーと言われました。今回クリアできてホッとしています。1度乳がんになると、同時だったり、時間を経てもう片側もなる可能性が多いですから。


現在、Aさんは手足や関節の痛みの副作用があるそうですが、仕事に復帰し頑張っているそうです。今後も検査受診が続くそうですが、順調な回復を応援させていただきます。

奥の建物はホテルなのですが、ワクチンセンターになってます。小さいですが、ワクチンセンターの黄色い道路標識が写ってます。


ワクチン接種が始まったイギリスコロナ事情!

こんにちは。

日本は新型コロナウイルス、ワクチンまだなようで大変そうですね。
私は職業上、仕事場と家の往復する毎日です。連日、1000人以上の方がお亡くなりになっていて、ほとんどが病院やケアホームで亡くなっているそうです。私の職場も他人事でなく、緊張感のある忙しい毎日です。

イギリス新聞
Stay home、Protect the NHS 、Save Lives 新聞記事

私は、12月に一回目のワクチン接種が済み、二回目のワクチンが来週の予定だったのですが、方針変更で2回目のワクチンが3月以降に変更になるかもしれません。私達の2回目の予約枠に、まだ一度もワクチンを受けててない人に受けさせて、1回目の接種人口を出来るだけ増やしたいらしいです。連絡待ちの状態です。しかし、同じ日にワクチンを受けた同僚がコロナに罹ったと聞きました。やはり、2回打たないと効果は薄い様です。この同僚とは一緒に働いてたので、私は月曜日にまたPCR受けます。

ワクチンを受けられる順番リスト 〜誰よりも、高齢者!〜

ワクチンパンフレット
COVID-19 ワクチン

高齢者施設でのクラスターで多くが亡くなっているのを反映して何と言っても、高齢者施設の入居者と施設のスタッフが、まず最初。80歳以上の高齢者、そこのスタッフが最優先。高齢者の介護施設での感染爆発が多いというのが、このワクチン摂取の順番を見ているとわかる。2番目80歳以上の高齢者と医療関係者、最前線(Front-Line)の私たちで治療やケアに関わる人。3番目が75歳以上。

4番目に、70歳以上で、基礎疾患を持ちコロナに罹りやすいと思われる脆弱な人。(妊婦と16歳未満は含まれない。)で、がん治療中の人はこの中に入る。この4番目に該当する人はロックダウン中も自己隔離する様に連絡が来ます。お医者さんは2番目看護師さんも2番目なのだけどまだ受けていないという人もいる。

がん患者について

友人の友人にがんの放射線治療を待っている人がいて、まず治療前にワクチンを打ってからとなり、治療が少し後回しになっている。今後、どうするか国会で論議しようということがニュースにもなっていましたが、結局、3ヶ月伸びた。

がんの人とコロナの人、それぞれ病棟は違うのだけれど病院は逼迫しているし、医療者がコロナになってしまっていたり。

見舞いの家族のことなどもかなり錯綜した状態です。ホスピスもロックダウン時は完全にシャットダウンだったけど、市民から意見が出て、国会でも討論になって、本当に看取りの段階では、家族一人だけ、30分以内の制限を設けて会いに行けるようになった。

国がガイドラインを示し、それぞれの施設での対策に合わせた判断をしつつやっている。 とにかく、病院そのものが、コロナ感染リスクが高いということなので、がん患者側も病院に行くにも行けない状態。

ワクチン接種

1回目だけでは、35%しか効果が無い。高齢者施設では1回目だけでは、またクラスターが起きる。

イギリスは、どこに何人感染したかという情報は少なくて、パニックを起こさないようにかな?その代わり、どこにいけばワクチンが受けられるとか。政府からの強いメッセージはそれなりにインパクトがあるように思います。

新聞 誰も死なせない
誰も一人では死なせない! 新聞記事

この、新聞紙面に明らかなように、「誰も一人では死なせない!」

職種、社会的地位にかかわらず、まずは「命を守る!」という気概を感じます。
Our Mantra is … というのは、目標というより使命!といった意味合いですね。

教会でワクチン接種
教会がワクチン会場に
教会でワクチン接種

イギリスのワクチンは3種類になったそう。 ワクチンはモデルナも追加されました。選べませんが、運搬、保存が簡単なアストラゼネカが主流になると思います。

ワクチンのカードはワクチンを打つともらえ、裏に一回目、二回目の打った日付、ワクチンの種類を記載されます。資料は打つ当日に承諾書にサインする前の待ち時間に読む様に渡されました。

罰則が!
電車などの公共交通機関内でマスクなし。罰金6400ポンド(100万円近く)です。病気や障害で対象外の人は、証明カードが必要です。私のお世話する障害者の方も証明カードを持ってます。

イギリスの新聞記事  〜連日、発信されるコロナ情報〜

新聞 RAISE THE LORD
“君主に賞賛”
  1. 病院の女性スタッフアップ写真の記事の見出し 
    “変異種の高い致死率”
  2. ボリス ジョンソンがその高い異変種について語った定期会見の写真。イギリス発症の変異種は感染力が強いだけではなく、元々のコロナ菌より30%以上致死率が高い研究結果が出たそうです。
  3. 教会がワクチン会場になった事にちなんで、聖書やキリスト教で使われる言葉”君主に賞賛”が見出しになってます。
  4. コロナで病院で亡くなる方へ向けて”誰も独りで死なせない”と言う見出し。緊迫した病院の様子の記事です。死にそうな患者さんに会い来れない家族とタブレットを使って会話をしてお別れさせたりして、どうにか、患者さんが独りで亡くならないように、病院のスタッフは頑張っているそうです。

チャリティー精神で、誰をも一人にさせないコミュニティー

イギリスには「無償医療とチャリティー団体の長い歴史」と言う面が日本とは、大きな違いです。NHSの資金不足、人手不足、予算カットのニュースを耳にしない日が無いのが現実ですが、その一方で、将来の納税者である出生率が毎年落ちる事がないのもまた日本とはまた大きな違いだと思います。違う国のシステムを理解しようと思うと奥深いですね。

元々、イギリスが感染者の多い理由は何なのか?というのは、何か特別なことがあるわけでは無いという気がしています。

クラスターとか、感染した様子を聞くと、学校で子供が移って家に帰って来る。日本にいたときは日本の方が家庭の生活、親子関係などが厚いと考えていたけど、実はイギリスの家庭の濃密さに驚かされています。飲食店が閉鎖になっていても子供は学校に行く。また、チャリティーに限らずコミュニティーの活動も盛んで国はダメだと言っていてもしっかり集まっている感じがします。権利でもあるし地域社会の一員である意識の差、文化の差でもあるかもしれません。

また、がんの人が自宅で籠っていてストレス溜めている場合は大きな助けにもなっている事実がある。

例えば、病院に行けないけど、緊急時はNHSの緊急電話番号にかけると、身体的でも精神的でも落ち込んだ人がかけてくると相談員に連絡してくれる。PCの出来ない人、老夫婦への手当もチャリティー例えばマクミランに窓口があってSWの権限で対応する。昔ながらの電話が機能している。

そして、イギリスは近所での情報交換がしっかりしている。チャリティー、地域コミュニティーがしっかりしている。近所の人が様子を見に行ってくれたり 学校の帰りにお年寄りの様子を見に行ってくれる子供達なんかもいるのが当たり前に小さなうちからボランティア体験をしている。

コロナの時代に限らず、子供達を交えた社会、コミュニティー環境が良くも悪くも存在し機能しているということが見えて来るのはそんなに悪いことでは無いな!と思っています。

     田村ゆみこCoxs

チャリティー マラソン

先日、私は地元の総合病院が開催するチャリティーマラソン大会に参加しました。

この病院には、チャリティー部門があります。チャリティー部門で集まった募金を、国からの予算では補えない治療装置、入院病棟設備、患者さん、家族のサポートなどに使われるそうです。病院はとても大きくいろんな専門科がありますので、科別に募金を募る様々のイベントを開催しています。昨年のマラソン大会は、乳がんの患者さんの為のマラソン大会でした。約800万円ほど集まったそうです。その他にもいろんなイベントを通し、たくさんの募金を集め、今年の春に最新技術を備えたマンモグラフィー装置を購入したそうです。もちろん、この装置はこの地域の住民がこの病院で利用できます。

私の参加した今年度は、脳梗塞患者さんの為のチャリティーマラソンです。募金の仕組みはシンプルで、マラソンの参加費、約2千円がそのまま募金されます。参加者以外にも応援に来た方なども当日募金できます。マラソン大会の運営は、チャリティースタッフをはじめ病院のスタッフや軍の方も手伝ってました。マラソンは、子供用に2.5キロコースと大人用に10キロコースがあります。毎年、子供が楽しめる様にドレスコード(守らなくてもよいので、私は遠慮しました)があり、今年はスーパーヒーロでした。スタートとゴールは、病院の正面。コースは病院の周辺の住宅街を走るロードレース。緊急病棟もある病院なので、道路を一切封鎖せず、みんなで譲り合いながら、車が来たら声を掛け合いながら、とってもフレンドリーに走ってました。近所の住民の方は音楽を演奏して応援してくれたり、給水を手伝ってくれたりして、あっと言う間の10キロでした。合計で900人以上の方が参加した様です。地元の子供から大人までみんな参加してお祭りの様なイベントでした。地域の人達が自分や家族が利用する病院の為に協力すると言った直接的な意味のあるチャリティーイベントだったと思います。募金の使い道もきちんと後に報告されます。マラソンは私の趣味なので、その趣味が何かの為になるのはとても嬉しい事です。今後も、他のチャリティーマラソンに参加する予定があるので、引き続きがんばりたいと思っています!

イギリス在宅緩和ケアケース

みなさんこんにちは。蒸し暑い日が続いていると思いますがいかがお過ごしでしょうか。イギリスの今年の夏は天候に恵ましたが、テロがあったり火災があったりで、落ち着かない夏です。

自分の望む場所、環境での最期

今回は、イギリスでのがん在宅緩和ケアがどういった感じなのかをお伝えしたく、私の過去の経験話をさせてもらいます。

数年前、私はメンタルヘルス専門の独立支援生活所で働いていた時、統合失調症であるトムさん(仮名)と出会いました。トムさんは60代の方で20代で統合失調症になり、40年経っても回復する事はなく、メンタルヘルス独立支援生活所に住んでいました。そんなトムさんが数年前、クリスマスの時期に膝が痛いと言い出しました。何度もファミリードクターに診てもらったのですが、その度に、たいした事ないと思う、疲れか年齢から来るものでは?と言われ、医者は、痛み止めを飲んで様子をみると言う診断でした。何度、診てもらっても何ともないと言われたトムさんが私に言った一言は、「この痛みは僕の妄想のせいなのかなあ?」今でも忘れられません。トムさんは、統合失調症と言う理由から体調不良を訴えても信じてもらえないのでは?という思いがあり、この時も自分を疑ってしまう状態でした。しかし、トムさんの膝の痛みは治まらず、2ヶ月後には歩くのが困難になり、やっとファミリードクターがレントゲンを撮る手続きをしました。レントゲンの結果、膝の痛みは肺からのがんが骨に転移した痛みだとわかりました。この段階で、トムさんのがんは全身に転移していて手術したり化学療法の治療ができる状況ではありませんでした。唯一、どこで緩和ケアを受けたいかと言うのがトムさんに残された選択でした。そしてトムさんは、はっきりと自分の家(支援生活所)で死にたいと言いました。トムさんは、ご家族もいらっしゃらなく、独立支援生活所に長年住んでいて、お友達もいました。トムさんにとっては、自分の家でした。

イギリスでは、トムさんが、緩和ケアを支援生活所の自分の部屋で受けると決めた時からその希望にあったケアを提供するのが、市町村の福祉課や病院の責任です。

トムさんの、緩和ケアの準備はトムさん側から申請すると言うより、向こうから来てくれると言う感じでした。トムさんの基本的な食事、洗濯、買い物の家事は支援生活所のスタッフが担当しました。介護士さんは毎日、朝と夕方に訪問して体を洗ったり、着替えを手伝ったりしてくれました。トムさんの痛みがひどい場合や眠れない時は、夜かかりっきりで介護士の方がベットの横でお世話してくれました。数名いるトムさんの介護士さんの中に、自らもがん治療を受けている方がいました。彼女は、バンダナで抜け毛を隠しトムさんに悟られないよう笑顔で介護してくれました。作業療法士さんは、在宅ケアに必要な介護用品や設備を手配し、体調が変わる度に訪問して、必要な設備を調整してくれました。

がん専門の看護士さんも、1日に2回、必要であれば、いつでも来てくれて痛みのレベルをチェックして、痛み止めを処方したり、呼吸、食欲、排便など、細かい所まで相談にのってくれました。

それに加え、ファミリードクターが週に2日訪問して体調を診断し、何かあった時は電話をすればすぐに駆けつけてくれました。

ボランティアのがん専門の看護士さんも週に一度訪問してトムさんといろんな話をしながら精神的な支えをしてくれました。

トムさんは残念な事に翌年の夏にお亡くなりになってしまいました。家族がいなくても、たくさんの人の協力のおかげで、希望通り自分の家(支援生活所)でお友達に囲まれながら最期を迎えられました。今は数年前に亡くなられた大親友の横でゆっくり眠ています。私も、わずかな間でしたが、トムさんとの貴重な出会いに感謝しています。禁煙を勧める私からいつも隠れてタバコを吸っていた姿や、出掛ける時は、いつもスーツ姿で英国紳士になるトムさんが今でも思い出に残っています。

イギリスの病院には成績表がある!

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イギリスよりこんにちは。

イギリスには日本のゴールデンウイークよりもちょっと早めの春休み「イースターホリデー」があります。イースターはキリストの復活祭ですが、一般的にはお休みを余暇に過ごす方がほとんどです。街のショーウインドーもイースターのウサギと卵の飾りでとても賑やかでした。

今回は、イギリスの病院における「がん治療の評価」についてお話ししたいと思います。

以前、日本在住の乳がんを患っていた母のがんの転移がわかった時、病院選びに困惑しました。

ネットで調べると、生存率や名医の紹介など様々な情報サイトがあり、それぞれに調査の仕方が違うので、どれが信憑性のあるデータなのかわかりませんでした。結局、ずっとお世話になっている地元の病院で同じ先生に診てもらいたいと言う母の考えを尊重しつつ、セカンドオピニオンとして、他の病院にも行きました。良い病院で良い治療が受けられる事を願うのは、誰しもが望むものですが、では、何を基準に何を信用して病院を選ぶのか、とても難しいと思います。

近年、イギリスでは各病院のがん治療をはじめとしたあらゆる病気や疾病の治療評価がNHS(national Health Service) のサイトでわかるようになりました。

イギリスの場合、ほとんどの病院が国立NHSによって運営されているため、評価基準を一本化する事が出来て情報の管理がしやすい事が利点かもしれません。

その病院のがん治療の評価システムの利用はとても簡単で、サイトにアクセスし、自分の住む郵便番号を入れ、病気をがんと選び検索します。

すると自分の通える範囲の各病院のがん治療評価が表示されます。

評価項目は以下のとおりです。

1.初めての診断で、きちんと診断してくれたか

2.初期段階で、がんと診断できた患者さんの率

3.がんと診断されてから62日以内に治療が開始出来た率

4.一年以上の生存率

5.患者さんの満足度

更に、詳しい情報が知りたい場合、「マイ、キャンサー トリートメント」と言うサイトがあり、こちらも郵便番号を入力し、がんの種類別、専門治療科を選ぶと詳しい各病院の各専門科の評価を知る事ができます。

(例)

XXX病院 調査方法

1.乳がん、放射線科

2.コンプライアンス

3.コンプライアンスの全国標準度をどれくらい満たしているか

4.患者さんへのアンケートの結果

4.患者さんの満足度

5.この調査結果で、緊急を要する改善点があったか

6.平均待ち時間

イギリスでは国を挙げて、全ての項目の向上を目指しています。

評価の悪い病院は、運営方法を見直し(新しい医師の派遣や予算を増やす)などの方法で改善を目指しているようです。

難点と言えば、医療費が無料の国営病院なので、住んでいる場所によって選べる病院が限られてしまう事です。

日本にもこの様な統一された信頼できる情報があれば便利ですが、病院の数も多く経営方法も違うので難しいのが現実ですね。

さて、いよいよ私は病院のチャリティーマラソンに挑戦します。

次回のイギリス通信をお楽しみに。

スティーブンの叶えたい46の夢

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イギリスよりこんにちは。

イギリス通信 第二便はイギリスのがん当事者と慈善団体の関係を少し知っていただく為に、イギリス全土を感動させたスティーブンという名の少年の話を紹介します。

スティーブンが15歳の時、ステージ3の大腸がんと診断されました。スティーブンは、いろいろな治療を受けながらブログを始めました。

治療の効果はあまりよくなく、大学と将来の夢は諦めなくてはいけないかもしれないという状況でした。

16歳になった時、叶えてみたい夢として46のやってみたい事リストをブログに載せました。

その内容は、本当に10代の少年が普通にやってみたい事が盛りだくさんでした。

例えば、

スカイダイビングに挑戦したい!

タトゥーを入れてみたい!

プレミアムリーグのサッカー試合が見たい!自分より大きな動物とハグしてみたい!

など。

スティーブンは体力の続く限り、このリストの夢を実現させ、達成した様子をブログに載せていきました。

そして、このスティーブンのリストの中に含まれたていたのが「Teenage Cancer Trust 」という10代でがんに罹ってしまった若者をサポートしている慈善団体へ約150万円の寄付金を集める事。

この寄付金は自分に見返りがある訳でもありません。これは自分のようにがんと闘う若者の役に立てたらという思いからでした。

スティーブンの諦めないで46の夢を実現させていく姿と慈悲深い行いにたくさんの人々の心が動かされました。スティーブンのブログは瞬く間にSNSを通しイギリス中に広がり、約1年間で4億5千万円もの寄付をTeenage Cancer Trust に集めたのです。

その3年後、スティーブンは46の夢をほぼ実現しましたが、がんは全身に転移。19歳の若さで天国へと旅立ってしまいました。

スティーブンが亡くなった後も寄付をする人は絶えず、現在約8億5千万円の寄付が集まってきているそうです。

このスティーブンの行動はたくさんの若年層のがんに対する認識を深めただけでなく、より多くのがんと闘う若者に勇気を与えました。そして何よりもTeenage Cancer Trust を通してたくさんのがん患者の若者達がサポートやケア(専門看護師の派遣、若者向けデザインの病棟、若者へのがんの教育など全て無料です)を受けられました。

この話を通して、少しでもイギリスの慈善団体とがん当事者さんの関係が何となく分かっていただけたら幸いです。

Hello from England!!
In order to explain a little more about relationships between cancer patients and charity organisations in England, I would like to introduce the story about the young man who made many people in England inspired and cried.

The 15-year-old boy, named Stephan was diagnosed with the Stage 3 of colon cancer. He started to write his blog while taking various treatments.

The outcome of treatments was not so good, and because of his condition he had to faced to the reality that he might not to be able to go to the university and also had to give up all his future dreams. When he turned 16, he posted the list of 46 items which he wanted to do on his blog. The lists were a lot of things which an ordinal teenager wanted to do. For example, skydiving, having tattoos, watching the football game of the Premium League, hugging with animals bigger than him, and so on.

Once he had managed to complete his list of dream, he posted on his blog and tried to continue to achieve all listed dreams come true as long as his physical strength lasted.

One of his listed items was to collect donations of 1.5 million yen (apx.) for the charity organisation called “Teenage Cancer Trust”, which supports teenagers suffering from cancer. This does not mean that he could be rewarded from the donation. He just wanted to help the teenagers who suffer from cancer like him. Many people were moved by his generous charitable spirit and also inspired by his challenges that he had never gave up to try to achieve his 46 dreams.

His blog was spread immediately via SNS throughout England and he collected 450 million yen(apx.) donation to Teenage Cancer Trust within about one year. After three years later from that, he managed to achieve almost all of his 46 dreams, but unfortunately,his cancer had spread to his whole body and he died at the young age of 19.

Many people continued to donate even after his death. It seems that the organisation has collected the total donation of 850 million yen today.(apx.)

I think that not only Stephen’s action improved the awareness and knowledge of cancer in younger people but also many young people who suffer from cancer have been encouraged to fight with cancer.

In addition, I would like to emphasis that Stephen helped more young cancer patients to receive care and support from Teenager Cancer Trust by his donations which include a specialised nurse care, ward design for young people, cancer education for young people, and so on ( no fee required, provided by Teenager Cancer Trust ).

I hope this story helped to understand the relationship between charity organisations and cancer patients in England.

Hello from England!

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Frimely Park Hospital Main Entrance
Frimely Park Hospital Main Entrance

はじめまして、イギリスよりこんにちは。

在英歴13年になる裕美子と申します。

イギリスで福祉の仕事を通して学んだ事や経験した事を活かし、 この度、イギリスのがんに関する社会福祉制度、 慈善団体の活動や影響力、 人々の生活など発信させてもらう事になりました。

私の母は日本で数年前にがんで亡くなりました。当時イギリスの医療や福祉制度を既に知っていた私は、 日本の制度に首をかしげる事が多々ありました。 そんな経験を活かし、 イギリスからの情報を発信できたらと思っています。

イギリスのがん患者さんの数は世界で22番目。 日本とイギリスを比較すると、 イギリスの方ががんの発症率は高く生存率も低いと言うデーターが報告されています。(世界保健機構より)

では、そんなイギリスのがん当事者のみなさんは、 どんな悩みを持ちながら日々生活しているのでしょうか? イギリスで行われたリサーチに以下の項目があげられていました

1.精神的な恐怖、不安、心配

2.疲れ

3.寝不足

4.痛み

5.食欲の減少

(Macmillan Cancer Reseachより引用)

日本におけるがん患者さんの悩みとして4つの柱としてあげられて いたのは以下でした。

1.治療の事

2.症状や副作用

3.心の不安

4.経済的、就業の不安

(静岡がんセンターより引用)

イギリスの当事者の方のほとんどの悩みは、 日本と類似していましたが、唯一、「経済的、就業の不安」 と言う項目はあげられていませんでした。

その理由はイギリスの充実した医療福祉制度にあると考えられます。

私は渡英前から欧州は福祉が充実していると耳にしていましたが、 語学留学が目的でイギリスに来たばかりの私はイギリスの医療福祉 の事については、何も知りませんでした。

そんな私が初めて病院に行ってびっくりしたのが、医療代が無料だったという事です。

当然ながら病院には会計のカウンターがありません。

診察室から真っ直ぐ病院を出た時に、 何かを忘れた変な感じがしたのを今でも覚えています。

がん治療で手術、化学治療、 入院などが必要でも全て無料です。

日本では、 まず病気をしたら心配する治療代や入院費と言うものを一切考える 必要がありません。

そして、 イギリスでは社会福祉手当や雇用も日本と比べてかなり保障されています。

お金がないから露頭に迷うと言う概念はまずありません。

社会福祉手当、 雇用法についてはまた今後詳しくお伝えできたらと思っています。


Hello from England.

Nice to meet you.

My name is Yumiko, I have been living in UK for 13 years.

I have the pleasure of sharing some information about the social welfare and care system, impacts of charitable organisations, and life of people with cancer in UK by through my work experiences and knowledge in Social Care in UK.

My mother has passed away in a few years ago in Japan, due to cancer.  When my family and I were planing my mother’s end of care, I have encountered such a difficult experience comparing organising care, support  and welfare for someone in UK. This is my reason that I would like to send messages and information about cancer from UK.

In order to discuss about cancer in UK, I looked into the population of cancer in UK. It was the top 22nd  in the world. Comparing UK with Japan, it was reported that, in UK, the incidence of cancer was higher and the survival rate was lower.(Reported by WHO)

Now, I would like to focus on common feelings of living with cancer.

The following feelings have been listed on the research conducted in UK.

1. Mental fear, anxiety, worry

2. Fatigue

3. Lack of sleep

4. Pain

5. Loss of appetite

(Quoted from Macmillan Cancer Research)

The following feelings have been listed on the research conducted in Japan.

1. About treatments

2. Symptoms and side effects

3. Anxiety

4. Finance matter and Work

(Quoted from Shizuoka Cancer Centre)

Most feelings listed between UK and Japan are similar but “Finance matter and work concerns”, was not listed UK.The possible reason is that UK has better medical and social welfare systems than Japan. Which I have also experienced personally.

When I had had just arrived at UK for studying English, did not know anything about the medical and welfare in UK. Only I had heard was that the European welfare system is much advanced than Japan.

One day I visited the hospital for the first time.What surprised me was that medical fee was free.Of course, there was no the payment reception at the hospital.I still remember that I felt strange like I forgot something when I left the hospital directly from the doctor’s office.

Any required treatments for cancer such as operation, chemotherapy, and hospitalisation are all free.

It is unnecessary for cancer patients in UK to worried about any expenses for treatments,tests and the fee for hospital bed which people in Japan start worried about immediately after the diagnosis.

In addition to that, the social welfare allowance and employment for cancer patients are more considerably supported in UK than Japan.

In UK,  Social security and welfare system protect fundamental life for all citizens. Nobody has never imagined which one day they may become homeless because she/he does not have any work, money or the house to live.

I would like to report more details about the social security and welfare in UK on the separate article in future.